(1)「訓注明月記」全八巻

稲村榮一著 
松江今井書店発行  
定価99,750円(本体95,000円+税)

 中世を代表する歌人藤原定家の日記「明月記」は当時の文学・政治・社会を知る上で欠かせない史料であるが、これまで本格的な注釈書はなかった。人名の特定が難しいことが第一の要因だが、長年地元で高校の国語の教師をつとめてきた著者は23年間かけて「明月記」を読み解き、人名もほぼ特定することができ、詳細な注をほどこした全八巻4120ページに及ぶ労作を完成させた。
 全八巻のうち六巻は本文の注釈で、残りの二巻は人名索引に当てられている。著者が最も力を注いだのが人名索引であり、従来の索引と一線を画するところは、人名、年月日、本文中での呼称、記事の一端を掲げた点であり、索引だけでも「明月記」を読み、研究する上で大変役立つものとなっている。
 発刊以来、国内はもとより海外の研究者からも高い評価を得ており、地元のことを中心として取り上げることが多い地方出版物の枠を超えたものとして異彩を放っていると言えよう。

訓注明月記